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<誰も知らないMAX 7人の物語2>“美しい人狼”ダリル・フェルドンク「オランダの新しい歴史を俺が作る」

 7月7日(日)に東京・国立代々木競技場第二体育館で開催の「K-1 WORLD MAX 2024」のK-1 WORLD MAX 2024 -70kg世界最強決定トーナメント決勝ラウンド進出を決めた、海外強豪の7人(ワイルドカード除く)。一体、どんな選手なのか? 短期連載で開幕戦を振り返りつつ、彼らの素顔を探ってみた(第2回=ダリル・フェルドンク)。
“美しい人狼”ことオランダのダリル・フェルドンクは、優勝候補の和島大海を豪腕フックでマットへ沈めた。衝撃のアップセットで、その名が一気に世界へ広まった。振り返れば、2002年に開催された第1回MAX世界大会も、オランダのアルバート・クラウスが優勝候補の魔娑斗を破り、初代王者に。歴史は繰り返されるのだろうか。
<決勝トーナメント一回戦組み合わせ>
オウヤン・フェン(中国)vs.ブアカーオ・バンチャメーク(タイ)
デング・シルバ(ブラジル)vs.ダリル・フェルドンク(オランダ)
ヴィクトル・アキモフ(ロシア)vsロマーノ・バクボード(スリナム)
カスペル・ムシンスキ(ポーランド)vs.ゾーラ・アカピャン(アルメニア)
――MAX世界大会開幕戦で倒した和島選手の印象を教えてください。
「和島が、もっと左ミドルキックを打ってくるだろうという予想をしていた。ミドルキック対策をしてきたので、意外だったね。ローキックやカーフキックで攻めてきたが、その後にミドルキックを蹴ってくると思っていたんだ」
――和島選手のミドルキックにカウンターを返していたので、向こうは警戒したのでは?
「そうかもしれないけど、ラッキーだったね。和島のキック対策として接近戦で戦うことを考えていたので、想像通りに自分の距離でフックを打つことができた」
――向こうはミドルキックで腕を潰しに来ると予想していたのですね。
「他人から見てみると少しごちゃっとした試合の印象があったかも知れないけど、何してくるか分からないようにするのが私たちのプラン。和島は非常に完璧さを求める人であって、それを崩すのが私たちの戦略だった」
――和島選手がペースを掴む前に倒すことが作戦だったのですね。それは、オウヤン・フェン選手が和島選手を倒す試合を参考にしていたのでしょうか。
「そうだね。オウヤンが和島と打ち合って勝ったのを見て、自分も打ち合ったら勝てると思い、同じ作戦(打ち合い)を使って効果があったんだ」
――元K-1チャンピオンの和島選手を倒して、自信にはなりましたか?
「いや、元々自信があるから、それは変わらない(笑)。K-1のチャンピオンになる力は自分にあるという事は証明できたので、そういう意味では自信は付いたかな」
――14年ぶりに復活したK-1 WORLD MAXのファイナルに進んだ事で、地元オランダでの反応はありましたか?
「最初、みんなにMAX復活を言った時に信じてもらえなかったんだ。でも、俺の試合を見てくれた人達みんなが、『すごいね』って言ってくれて、今は地元は盛り上がっているよ」
――フェルドンク選手が、格闘技を始めたキッカケを教えてください。
「自分の家は、とにかくスポーツをしなければいけない家系だった。4歳の時にサッカーを弟とやり始めて、5、6歳になってもあんまり面白くないなと感じ始めていた時に、おじいちゃんとK-1を見たんだ。その時に、アルバート・クラウス、アンディ・サワーが出ていて、すごいな~と思い、やりたいという気持ちが生まれた」
――そうだったんですね。
「それで、8歳の時にサッカーを辞めて、キックボクシングに移籍した。それ以降は、ずっとキックボクシングをやっているよ」
――格闘技一本で生活している? 他にも仕事は?
「メインの仕事はファイターであって、色んなスポンサーが付いてくれている。それとは他に、リングで学んだことをトレーナーとしてグループレッスンで教えているよ」
――格闘技以外の趣味は?
「ほとんどの時間はジムにいるんだけど、時間が出来たら彼女と食事や旅行したりする。自分の弟がとてもハイレベルなサッカー選手(カルヴィン・フェルドンク)で、オランダ1部リーグ・エールディヴィジのNECナイメヘンというクラブに入っている。そのチームは今年とても成績がいいので、もしかしたらヨーロッパの主要リーグにスカウトされるかもしれない」
――弟さんは有名なサッカー選手なのですね。K-1MAX初代世界王者のアルバート・クラウスさんと交流があるようですが、他は?
「K-1レジェンドは、クラウス以外はあまり交流がないんだけど、リコ・ヴァーホーベンと時々トレーニングしているよ。クラウスに『日本はどうだった?』と聞かれ、あとは準々決勝の相手のデング・シルバのことについて調べてくれていて、色んなアドバイスをしてくれて、俺のトレーナーと一緒に分析をしてくれている」
――それは頼もしいですね。クラウスさんと一緒に来日はしないんですか?
「どうなんだろう。その答えはアルバートにしか分からない。来てくれれば嬉しいけど、彼次第かな」
――決勝ラウンドの抽選会では、オウヤン選手をみんなが避けました。彼に対する印象はありますか?
「まず、俺がデングを選んだ理由についてだけど、抽選の前にトレーナーと話してデングが良いのではという話になったんだ。抽選会で自分の番になった時、カスペル・ムシンスキム、デング・シルバ、オウヤン・フェンの3人を選べる立場にいた。でもデングは、俺と戦いたいと話していたので、上等じゃないかと挑むことになったんだ。背は高いけど、俺はビビってないので『上等だ』という感じだよ」
――オウヤン選手については?
「現K-1チャンピオンなので、とても素晴らしいファイターだと思う。彼はプレッシャーに耐えることもできて、ボクシングもキックもすごい良い選手だ。でも彼と戦えば、絶対に3Rを戦かわなければいけなくなる。削り合いになるので、決勝トーナメントの1回戦では当たる事は避けたい。みんなそれで避けたんじゃないかな」
――開幕戦で他に印象に残った試合、選手ありましたか?
「テレビモニターがあちこちにあったので、全ての試合は見るようにしたけど、特に印象的だったのはアキモフvs中島の試合だ。素晴らしいKOが印象的だった(バックブローによるKO)。中島は手を下げて攻撃したのが悪かったんだろうけど、それにしてもアキモフのカウンターは良かったね。あとは、ロマーノ・バグボードは減点がありつつ、10オンスの大きいグローブもしていての延長戦で勝ったので、強いなという印象だね」
――強豪と見られていたタナンチャイ選手の敗北は、どう見てますか?
「非常にムエタイのファイターとしてよく対応したなという印象。クリンチもあまり無かったし、タイ式の足払いとかもなくて。ただバグボードのプレッシャーに負けた気がしたね。ムエタイの選手は1つ2つの単発の攻撃をする癖があるんだけど、キックボクシングの連打、コンビネーションっていうのはちょっと違う。それでバグボードはうまく戦い、ポイントで勝ったね」
――では、初戦のデング選手の開幕戦(vs璃久戦)を見た印象は?
「璃久は距離を埋めることができなかった。全ての攻撃はデングの距離にあって、璃久の距離を生み出す事はできなかった。倒れた後、デングは倒れてる相手にとどめを刺すように追いかけたけど、当たらなかった印象だね。彼が倒したというよりも、ケガで続けることができない感じだった」
――デング選手はこの階級では身長が高く、身長差があり戦いにくい相手だと思います。
「問題ないよ。オランダには背の高い選手が沢山いるからね。トレーニングパートナーの中にも、デングと同じ背の高さが2人もいる。大したことではないよ。ただ彼の一番危ない武器は距離をうまく使えている所。高さを本当にうまく使えている印象がある」
――評価はしていると。
「簡単だとは思っていないよ。結構アグレッシブなファイターだし、技術面で戦うというよりも、追いかけてプレッシャーかけるタイプ。打ち合うのは私も好きなので、打ち合いになるんじゃないかな」
――ワンデイで3試合戦うことになります。早いラウンドで決めたい?
「戦ってみないと分からないけど、自分の試合のほとんどは早く終わる場合が多くて、それを振り返ってみても、その確率は高いだろうね。出来るだけ早く終わらせたいとは思っているよ」
――優勝するために必要なことは何ですか?
「初めて1日3試合をやるんだけど、準備としていつもの様にすごくハードな練習をしっかりして、自分はスタミナがとても良いのでそれをまずは鍛えるよ」
――MAXのチャンピオンになったら、どんな未来がやってきますか?
「すでに元チャンピオン(和島)に勝っているので、現チャンピオン(オウヤン)にも勝ち、このトーナメントで優勝して俺が真のチャンピオンになる。そういう未来が見えているよ」
――14年前のMAX世界大会は、クラウス選手が優勝してオランダの強さを見せつける結果になりました。今回、あなたも伝統を受け継ぎたいという気持ちはありますか?
「歴史を振り返るというより、新たな歴史を刻みたい。オランダ人の伝説を受け継ぐというよりも、自分で新しい歴史を作っていくよ」
 
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