9月25日(水)、都内にて、11月16日(土)「Krush.167」東京・後楽園ホール大会の第1弾カード発表記者会見が行なわれた。
今大会のメインカード候補として発表されたのは、里見柚己vsアーロン・クラークのKrushライト級ワンマッチだ。里見は昨年大沢文也を破ってKrushライト級王者となったが、今年の2.24「Krush.158」後楽園ホール大会で伊藤健人に敗れて、王座から陥落。しかし、8.18「Krush.164」後楽園ホール大会で、永澤サムエル聖光にKO勝利し、見事に再起を飾っていた。その試合後に外国人選手との対戦を希望していたが、その希望に沿い、今回クラークとのワンマッチが決定したのだ。
クラークは昨年の6.3K-1横浜武道館大会で、K-1 GROUP初参戦。K-1ライト級王者の与座優貴と戦い、敗れはしたものの判定に持ち込むタフな戦いぶりを見せつけた。宮田充Krushプロデューサーによると、その戦いぶりから再来日を希望する声が多かったという。そこで「勝ちっぷりも負けっぷりもどっちもいい」(宮田)という里見の相手として、今大会への参戦が決定した。
クラークに関して、「与座選手との試合を見た時に体大きかったなっていうイメージがあって、体は強いんだろうなっていうのと、本当にK-1チャンピオンの強い攻撃を食らっても倒れはしなかったんで、凄い体が強いのと、攻撃は海外特有の独特なスタイル」と評した里見。「同じ人間なんで、しっかり顔に当たれば倒れると思っているんで、自分の得意なパンチが当たって、それが当たった後に相手がどうなるのかは自分でも凄いワクワクしています」と、このクラーク相手にも、一歩も引くつもりはない。「自分が華やかだと思う選手は、勝ち方も負け方も華がある。勝ちに徹して勝つよりも、リスクを背負って倒される覚悟を持ってKOされに行った方が自分はカッコいいと思っていて、それを見せるのもKrushのリング。人の心を動かす勝ち方を目指して日々作り上げています」という哲学を持っている里見。国際戦は19歳だった2017年7.17「Krush.70」での、ワン・ジュングァン戦以来となる。その2度目の国際戦で、「ここで自分がしっかりとKOするようなことがあれば、今年の屈辱をしっかり返せられるような感じで終われると思っているんで、しっかり会場が爆発するような試合を見せたいと思います」と、溜まった鬱憤を全て晴らすつもりだ。
今大会ではこの里見vsクラーク戦も含め、国際戦が3試合組まれる。そのうち2試合は女子のKrush王者の試合だ。その一人であるKrush女子アトム級王者の松谷綺は、オーストラリアのガブリエル・デ・ラモスとKrush女子アトム級ワンマッチで対戦することが決定した。松谷は昨年、奥脇奈々との王座決定戦を制して、Krush女子アトム級王座を初戴冠。今年の7.7K-1代々木大会ではチョン・ユジョンに勝利しているが、Krush王者となってからは初のKrushのリングでの試合となる。
対するガブリエルはフィリピン出身の選手。昨年の12.9K-1大阪大会で菅原美優と対戦したルシール・デッドマンのライバルで、過去に2度、実力伯仲の勝負を繰り広げたという選手だ。会見に同席した宮田プロデューサーによると、女子の選手層がまだ薄い中で、松谷の挑戦者に相応しい選手がいないということから、このガブリエルの招聘に踏み切ったという。
「前回に続き今回も国際戦ということで、Krush王者の強さをしっかり見せつけて、圧倒して勝ちたいと思っています」と意気込みを語った松谷。初参戦のガブリエルに関して、「ムエタイスタイルで手足も長くて、凄くキレイに戦う選手だなっていう印象です。自分的にはやりやすいというか、攻略法はあるなっていう感じです」と、全く臆するところがない。
前回の試合からフィジカルの強化に取り組んでいるとのことで、「瞬発系のフィジカルを取り入れたりとか、体がだんだんデカくなってきて、パワーも自分でついたかなと思う」と自信を見せる。その自信が言わせたのか、会見の終盤には宮田プロデューサーに対して、一つの提案を行なった。松谷は、「自分がベルトを獲ったのが去年の11月25日で、ちょうど試合の時に1年ぐらい経つんですけど、1年も経つのに防衛戦をやらないのはどうかと思うし、まあ今回強豪の選手が来てくれるということで、世界最高峰の団体を証明するのにも、ベルトを懸けた戦いにしてもらえないかなって」と、このワンマッチをタイトルマッチに変えてくれないかと直訴したのだ。
この松谷の突然の直訴には、さすがの宮田プロデューサーも面食らった様子だったが、「一番大事なポイントの体重は45kgで決まっているし、相手も勝てばチャンピオンということだし、いけるんじゃないかなと思いますね」と乗り気。各所調整しなければいけないところはあるが、「ほぼ決定で行きましょう」と、タイトルマッチへの変更に向けて、協議に入ることを約束した。だが、松谷に対しては「変わっているというか、勇ましいですね」と感心した様子。その松谷は、「皆さんに期待してもらっている分、試合でしっかり魅せて勝つんで、今回も応援よろしくお願いします」と、必勝を誓っていた。
もう一人のKrush女子王者、Krush女子フライ級王者の池内紀子は韓国のチェ・ウンジを、Krush女子フライ級ワンマッチで迎撃する。池内は今年の1.28「Krush.157」後楽園ホール大会で行なわれた、第6代Krush女子フライ級王座決定トーナメント決勝戦で麻央に勝利し、チャンピオンになった。その後、腰の負傷で試合間隔が空いたが、満を持してチャンピオンとしての初陣を国際戦で飾ることになる。
対戦相手のチェ・ウンジはKrush初参戦だが、修斗、DEEP JEWELSと、MMAのリングで過去に2度来日経験がある。今回はあくまでもキックボクサーとしての来日。Krushの女子フライ級と同じ52kgの、MAX FC女子バンタム級王者としてKrushのリングに上がる。
「初めての海外の選手で凄くワクワクしています。ただ勝つだけじゃなくて、しっかり倒しきりたいと思います」と意気込んだ池内。チェ・ウンジに関しては、「凄くリーチのある選手だなと思っていて、実際戦うと遠く感じるのかなという印象でした。パンチの印象が凄く強くて、しっかり脱力して打ってくるなって感じでした」と評価。その上で、自身もこの欠場していた期間に強化していたところがあるようで、「パンチでも蹴りでもしっかり倒せるような技術をつけてきたので、楽しみにしていてください」と、自信たっぷりに言い放っていた。また、チャンピオンになって、「誰と戦っても圧倒的に勝つっていうのは普段から思っているんですけど、それがさらに強くなりました」という自覚も芽生えた様子の池内。今回の会見で参戦が発表された、女子ボクシングで実績を積んできた木村萌那の、「次がタイトルマッチでも大丈夫です」という発言を受けて、「甘いもんじゃないよって見せたい」と、王者としてのプライドも滲ませていた。
その木村萌那だが、幼い頃より空手とボクシングで実績を積み、今年の4月よりK-1ジム目黒でキックボクシングの練習を開始。今大会において、異例の本戦でのデビュー戦を飾ることになった。なお、対戦相手は後日発表となる。
木村は、ボクシングでは2022年には女子ボクシング世界選手権大会出場や、第17回、第18回の全日本女子ボクシング選手権大会のフェザー級で優勝。さらに空手でもJKJO全日本ジュニア空手道選手権大会7連覇と、アマチュア格闘技で数々の実績を積み上げてきた。
プロの女子ボクシングに進む道もあったが、「プロのボクサーにはあまりなろうと思わなくて、プロの女子ボクシングって2分なんですけど、私のスタイル的に2分だと足りなくて、見合っていて終わっちゃうので、3分での戦いがしたいなと思って」と、ボクシングを辞めたという。そんな時に、大学時代にアルバイトをしていたK-1ジム目黒の内田康弘会長から、キックボクシングへの誘いを受けた。
本当はボクシングジムでのアルバイト先を探していたという木村だったが、その時は見つからず。たまたま募集していたのがK-1ジム目黒だった。そこではトレーナーとしてミットを持つ係などををしていたというが、「会長から、『キックボクシングをプロでやらないか?』ってお誘いいただいて、『じゃあ、やろうかな』みたいな、軽いノリで最初は決意したんですけど、練習していくうちに楽しいってなって、K-1でベルトを獲りたいなと思って始めました」と、偶然の縁が重なってのキックボクシング転向となったようだ。
今年の4月よりキックボクシングのトレーニングを開始したが、「ボクシングをしている時は距離が遠いって言われていたんですけど、蹴りがあると、私のボクシングの距離では普通って言われる感じの距離感なので、キックボクシングってなるとより遠い距離での戦いを求められるので、距離感が難しいなと思っています」と、難しさも感じているという。しかし、元々空手をやっていたこともあり、「空手が凄い好きなので、また蹴りの業界に来られたのが嬉しい」と、再び蹴ることができる喜びも感じているようだ。
「挑戦者という気持ちで、ドンドンこれからK-1を盛り上げていきたいと思っているので、初戦は絶対KOで勝ちたいと思っています」と、ド派手なデビューに意気込む木村。「やっぱりボクシングの技術だけで言ったら私が一番だと思っているので、私の土俵に引きずり込んで戦っていきたいと思っています」と、やはり自信があるのは実績を積んできたボクシングの技術のようだ。女子のアマチュアボクシングは「タッチゲームみたいな、ポイントを獲って、的確な場所に当てるっていうのが目的だと思うので、まさにそういう感じのボクシングをアマチュア時代はしていたので、倒せるのかって自分も不安になることもある」と語った木村。しかし、「パンチ力は結構自信があって、しかも女子は6オンスで戦うので。プロのボクシングは8オンスなんで、6オンスで殴れるのはないので凄い楽しみにしています」と、自分のパンチの威力がどこまで通用するのかにも、興味を持っているようだった。
K-1 GROUPでの目標はチャンピオンになることとキッパリ。そのため、「相場がわからないんですけど、早ければ早いほどいいので、次でも大丈夫です」と、早い段階でのタイトルマッチを望んでいる。最後に「最近、女子の大会も少なくて、中には女子のキックボクシングが面白くないって思う人もいると思うんですけど、私はそういうふうには絶対にさせないので、誰よりも面白い試合をしたいと思っているので、応援よろしくお願いします」と、ファンに約束した木村。K-1 GROUPの女子戦線に新風を吹き込むか? 要注目だ。
また、その他のカードとして、Krushバンタム級ワンマッチとして、愛瑠斗vs鵜澤悠也、さらにプレリミナリーファイトとしてKrushスーパー・バンタム級の遥心vs近藤壮真も発表。残りのカードも随時発表されるという。