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<誰も知らないMAX 7人の物語3>“執念のラストマン”カスペル・ムシンスキ「MAXで自分の伝説を作りたい!」

 7月7日(日)に東京・国立代々木競技場第二体育館で開催の「K-1 WORLD MAX 2024」のK-1 WORLD MAX 2024 -70kg世界最強決定トーナメント決勝ラウンド進出を決めた、海外強豪の7人(ワイルドカード除く)。一体、どんな選手なのか? 短期連載で開幕戦を振り返りつつ、彼らの素顔を探ってみた(第3回=カスペル・ムシンスキ)。
“執念のラストマン”ことポーランドのカスペル・ムシンスキ(※ムジンスキから変更)は、開幕戦で外国人エースのストーヤン・コプリヴレンスキーを破り下剋上をはたした。世界トップクラスのストーヤンに「君みたいな選手が埋もれていたとは」と言わしめ、サプライズを起こした原動力はどこにあったのだろうか。
<決勝トーナメント一回戦組み合わせ>
オウヤン・フェン(中国)vs.ブアカーオ・バンチャメーク(タイ)
デング・シルバ(ブラジル)vs.ダリル・フェルドンク(オランダ)
ヴィクトル・アキモフ(ロシア)vsロマーノ・バクボード(スリナム)
カスペル・ムシンスキ(ポーランド)vs.ゾーラ・アカピャン(アルメニア)
――MAX開幕戦のストーヤン戦は優勝候補との戦いだっただけに、まさにサプライズとなりました。
「これまでトップファイターと戦う経験が今までにあまりなく、彼と戦えた事は自分にとって非常に良い経験でした。これから彼みたいなレベルの人と戦って勝つためには、何をすべきか参考になりましたね」
――優勝候補のストーヤン選手に、なぜ勝てたのでしょうか。
「一番は、負ける怖さがなかったことでしょうね。私には失うものがなかったから。3R目、コーチに『全部出してぶつかって来い』と言われて、その通りにしたら右フックが当たって相手をダウンすることができた。怖さは本当になかったんです。挑むことのみ考えていました」
――母国での盛り上がりは、どんな様子でしたか?
「兄もトレーナーをしているので、自分が所属しているジムの反応はすごく良かったです。勝った夜は、一晩中みんなにメッセージの返事を書いたりしていました。ただ、ポーランド国内ではキックボクシングはそんなに盛り上がっているわけではなくて、まだまだこれからという印象はあるんですけど、自分の住んでいる街では盛り上がっていましたね」
――試合後、奥さんとの会話では何を話していたのですか?
「試合直後、ポーランドは朝の11時くらいで妻のジャネッタに『無事に終わったよ』と報告をしました。息子のアダムは昼寝から起きたばかりでしたが、試合の内容や結果について話をしました」
――ストーヤン選手は、「君みたいな強い選手がなぜ埋もれていたんだ?」と試合後に話していたようですね。
「じつは、試合後のことはあんまり覚えていないんです(笑)」
――今回のアップセットについては、どう見ていますか?
「実は開幕戦の3週間前、4人のトーナメントに出ていて、足のケガもあり、自分のコンディションが優れていなかったんです。でもお兄ちゃんのバーデックっから、『こんなチャンスは二度と来ないからリスクを背負ってでも、絶対にこれは出るべきだ』と言われ、出場する判断をしました」
――しかも、急なオファーでした。
「ケガもそうだけど、減量もかなり厳しかったです。トーナメントで勝った翌週にオファーが来たので、試合が終わってからの1週間は、好きなだけ食べていたんです。ちょうど、オファーが来る前日に妻とワイン1本空けて、すごく気持ちがいい時にオファーが来て。自分の調子はどうかな?と思い動いてみたら、調子は大丈夫そうだと思い、出場する決意をしました。でも、今回の減量はかなり厳しかったですね」
――試合後の家族との会話など、すごく家族思いの一面があります。K-1で優勝して有名になってお金を稼ぎ、家族のために強くいたいという気持ちは強いのでしょうか。
「そうですね。金銭的に困らないように頑張りたいとは、いつも思っています。それと同時に、トーナメントに勝った際にはもっと強い相手と戦ってみたいという願望もあります。家族を大事にしながら、その夢も追いかけていきたいです」
――あなたが格闘技を始めたのは何歳から?
「キックボクシングを8歳に始めました。そして12歳でトーナメントに出始めました(膝、バックブロー禁止。ローキックありルール)」
――ファイター以外にも仕事はしていますか?
「家族もいるので、ファイター一本で生計を立ていなくてコーチの仕事をしています。ポーランドのポルカピッザやルビンという街でも、ジムを経営しています。1日8時間コーチをして、自分のトレーニングは1日2回やっています。大学時代は看護師の勉強をしていたんですけど、一生病院の中で過ごしたくないと思い、1年あまりで大学を中退しました。それからコンディショニングとストライキングのトレーナーをやってみたいと思い、今に至ります。人の身体を鍛えるコーチとして生きていきたいと考えています」
――格闘技を続ける一番のモチベーションはなんですか?
「そのライフスタイルが自分に合っていて、厳しいトレーニングがとにかく好きですね。前より強くなること、隣のやつよりももっと強くなること。それが明確に分かるのが、格闘技の魅力ですね」
――理想のゴールはありますか?
「今まで貧しい生活をしていたので、頑張っても評価もなく何も得られないことが多かった。でも、自分の階級で、ポーランドで1番になりました。その次は、70kgで世界のトップ3位に入りたい。そのためにも、今回のMAXでは絶対に結果を出したいです。そして、自分の伝説を作りたいですね」
――ポーランドのキックボクシングの人気はいかがでしょうか?
「ポーランドではアマチュアの試合は非常に人気がありますが、プロがなぜか人気がないんです。MMAの人気は凄くあるんですけど、プロのキックボクシングの試合はほとんど注目されていない。プロ団体があまりプロモーションしてくれなくて、勝った人の宣伝を何もやらないんです。プロ団体のSNSには10万人くらいのフォロワーがいるのですけど、あまり投稿しなくてWAKOのチャンピオンがいてもプロモーションしてくれない。私は、それを変えたいと思っているんですけど、ポーランドでキックボクシングのイベントを成功させるのは、まだまだ課題が山積みですね」
――ポーランドのキックボクシング人気のためには、あなたの活躍にもかかっているということですね。決勝ラウンドは、注目されているゾーラ・アカピャン選手と初戦を戦います。抽選会では彼があなたを選ぶ形になりました。
「別になんとも思ってなくて、彼が私を選んだのは勝てると思って選んだんだろうけど、今回は前回と違い充分な準備期間がある。減量で無理することもなく、苦労することもないので、ちゃんと準備が出来ているのであれば、あまり問題とは思っていないですね。私がストーヤンに勝っているので、無名ながら自分のスキルは証明出来たと思っているので自信がありますよ」
――アカピャン選手は優勝候補の一角と言われていますが、気にしていないと。
「非常に強い選手であるのは間違いないですが、彼に勝った選手と自分の兄が話したことがあって、彼の強みと弱みを教えてもらった。どうしたら勝てるかも聞いてきたので、間違いなくいい試合になると思うし、もちろん私が勝ちます」
――かなり自信がありそうですね。
「アカピャンに関しては、(タラス・)ナチュックからダウンを奪わなかったら、勝てなかったんじゃないかと思っています。そのナチュックを1Rで倒した選手を私は勝っているので、すごく自信がありますよ」
――最後に意気込みをお願いします。
「大きなものを得るためには、あえて厳しく逆境の道を進むしかないと私は思っています。だからこそ今回の大会を選びましたし、私はベストを尽くします。大会当日は、ベストファイトを見せる自信があります。私の全てをぶつけて勝ちますので、楽しみにしていてください」
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